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らっきょうの味

   


ハードディスクの中を整理しておりましたら、何やら見慣れぬドキュメントファイルとPDFが出て参りました。

ファイルの保存日時を見る限りでは2012年に書いたモノのよう。

タイトルはこの記事のタイトルと同じ「らっきょうの味」

何用に書いた記事なのか全くもって記憶にないのですが、食べ物に関するお話なので、こちらのサイトに載っけてみようかと思いまして。

テイスト的には、ちょっと柄にも無いことを・・・と思わなくもないのですが、PDF原文のまま、以下へ掲載してみます。

 

 

「らっきょうの味」

小さな頃から何気なく食べていた「らっきょう」。
カレーライスのお供と言えば、福神漬けでもレーズンでもなく、「らっきょう」がお家で食べるカレーの最強のパートナーだった。
そして、自分はカレーがメインなのか「らっきょう」がメインなのかわからなくなる程、バリボリと「らっきょう」を食べていた。
それほど好きな「らっきょう」はいつも祖母が漬けていた。

 

その頃はもっぱら食べることばかりに気を取られていた為、そんなに美味しく漬けられていた「らっきょう」を祖母が食べる姿を見たことがないことには全く気付いていなかったが、決して祖母は自分の漬けた「らっきょう」を食べることが無かった。

 

祖母は「らっきょう」自体が好きではなかったのである。

何か嫌な思い出でもあったのかとも思ったが、野菜嫌いな祖母からすると「らっきょう」もやはり野菜なようで、「らっきょう」を食べる意味がわからないのだそうである。

それでも孫の好物とあれば、漬け続けるのが“ババゴコロ”との事で毎年のように漬け続けてくれていたのだが、自分を含め、すべての孫が成人し、遠く離れてしまった今は漬ける事をやめてしまっていた。

 

おそらく自分が大学生の頃にはもう「らっきょう」を漬けることをやめてしまっていたようなのだが、その時分には、そのような事に気づくこともなく、ただただ日々飲み歩いており、お酒との相性が悪いとの理由でカレー自体を食することが無くなっていたのである。

居酒屋で「らっきょう」がお通しや漬物の盛り合わせの一角として出てくることもあったが、メインは完全にアルコールの方になっており、「らっきょう」の味の違いなど気に留めることもなかった。

 

アルコール漬けと言っても過言ではないほどに飲み続け、10年が経過した頃、大した酒量でも無い時ですら嘔吐する事が多くなり、吐瀉物に赤いものが混ざることが多くなっている事に気づく。腹部が痛むのか胸部が痛むのか、はたまた背中が痛むのか区別がつかない程の痛みを感じるのが日常となったある日、ようやく病院へ行き、何回かの検査を経て医師から告げられたのは「慢性膵炎」という病名。

 

大好きだったお酒と別れを告げ、何をどのタイミングで食せば良いのかわからない時期を乗り越えた頃、カレーライスの存在を思い出す。
もちろん「らっきょう」も一緒である。
でも、その「らっきょう」は祖母が漬けたものではなく、市販の「らっきょう」。
自分の記憶の中に残っていた「らっきょう」の味とはかけ離れている。

 

色々なタイプの市販の「らっきょう」を試してみるが、どうしても子供の頃にバリボリ食べていた「らっきょう」の味に近いものと巡りあえず、漬物液をミックスしてみてもダメ。
久々に祖母のいる実家へ立ち寄った際に作り方をきいてみると、そもそも自分では食してすらいなかった為、覚えていないとのこと。

 

現在も、子供の頃、バリボリ食べていた「らっきょう」の味を再現することはできておらず、どうやら漬物液のベースは甘酢タイプらしいといった程度にしか近づけていない。
祖母は今も健在で、これからもずっと元気で長生きしてもらいたいものであるが、もし仮に祖母が亡くなったとしても、この「らっきょう」の味を追い求めている限りは自分の中での祖母の存在が薄れることはないのだなと。

 

そして子供の頃、バリボリ食べていたあの「らっきょう」の味は再現できないものだということも今はうっすらとわかりかけている。

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